寛永通宝(四文銭)
踏潰 | 銭文と背波が、あたかも足で踏み潰されたような歪み方をしているのでこの名があります。ごく最近まで秋田踏潰と呼称され、秋田鋳と推測されていた時代もありました。ウブ銭からの出現状況から、現在は南部鋳とする意見が多く、盛岡市内で鋳られた藩鋳銭と唱える人もいます。彷鋳銭としては立派な制作で、存在数も意外に多く、大規模な鋳銭であったことが窺われます。直写しに近い系統と、新規母銭の系統が存在しますが、新規母銭の系統も、殆どは官鋳銭の小字を範にしているものと推定されます。 | |
踏潰 濶永 (ハドソン図会名 広永) |
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踏潰 正永背削輪 ハドソン図会譜で初めて泉譜に紹介されました。濶永に似ています。 |
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踏潰 小点永 大様 書体としては通字マ頭が仰ぐ特徴があります。 |
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踏潰 濶永刔輪 (ハドソン図会名 濶永) |
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踏潰 濶永刔輪欠波 (ハドソン図会名 濶永欠波) 背波が一部切れる小異です。 |
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踏潰 小字手 永字フ頭が仰ぐ特徴のある、泉譜で良く紹介されている手です。 |
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踏潰 小字手 直写しの系統で、文政期の小字を写したものと思われます。背波は踏潰の特徴があり不揃いとなっています。 |
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踏潰 小字手 同様に文政期の小字を写したものと思われます。背も同様ですが、面背に若干の小異があります。 |
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踏潰 俯永手 俯永を写したものと思われます。寛字が進んでおり、直写しではなく新規に母銭を起こした可能性もあります。面背のやすり目は典型的な踏潰銭のものです。 |
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踏潰 俯永手 寛字が進み、永点が陰起する等の特徴が前品と共通しており、同一種と思われます。 |
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踏潰 俯永手 前品より永字フ画が長く、別手と思われます。 |
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踏潰 俯永手 泉譜で良く掲載されている手です。 |
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踏潰 俯永手 同上です。面背のやすり目は典型的な踏潰銭のものです。 |
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浄法寺銭 | 岩手県二戸市浄法寺町で幕末に密鋳された銭で、寛永銭のほか、天保銭も鋳られています。新寛永泉志に解説されている通り銭文陰起し、いかにも密鋳銭の雰囲気があります。鋳肌は粗いですが、流通により粗さは目立たなくなり、流通度合いによって雰囲気が異なります。伝世品の色調は紫〜茶褐色。未仕上げの肌は灰色です。銅色は様々ですが、銅含量の比較的高い金属組成です。
伝世品の輪側はテーパー仕上げと垂直仕上げと二種類ありますが、未仕上銭はテーパー制作です。 尚、浄法寺飛鳥銭という鋳放し銭は、不純物が多量に混ざった極めて特徴的な金属組成で、下記掲載の銭と金属組成が全く異なっています。精錬が十分でない金属原料を用いたものと思われ、それらは浄法寺銭としても全く別座であると私考しています。 |
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浄法寺銭 背盛 鋳放しの未仕上げ銭のため、真贋に若干の疑義が感じられます。しかし、銭文の立ち具合や陰起箇所、通下凹みなどの約束事は合っており、拓本を採ると銭文と内径が古拓と同一です。金属組成を蛍光X線回折分析から測定した所、下記伝世品と同等の特徴を有していました。まあ、良いのではないかと思っています。 |
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浄法寺銭 背盛 鋳放しの未仕上げ銭ですが、若干使用された銭です。肌は上の品と下の品の中間的な雰囲気があり、拓本を採ると銭文と内径は古拓と同一です。良いのではないかと思っています。 |
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浄法寺銭 背盛 上記鋳放銭2品を含め、この類の通下にはどれも〇模様があり、母銭からの伝鋳と考えられます。本品の輪側は安政期のような直角仕上げです。本品は面文が特徴的なため間違える事はありませんが、江刺銭に似た肌合いをしています。 |
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浄法寺銭 接郭 伝世品ですが、荒い銭肌の雰囲気は僅かに残っています。 ハドソン譜では、上記の背盛と同面文と解説されていますが、寛字見画が下すぼみになり、瑕宝となるなどの削字と思われる共通点があり、いくつかの違いがあります。本品の輪側は丸みを帯びています。 |
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浄法寺銭 接郭 明瞭な無背銭ですが、背盛銭にみられる通下〇印が認められます。接郭銭の一系統は浄法寺背盛と元親が同じ可能性があり、本品は上記銭と別系統かもしれません。本品の輪側は安政期銭のような仕上げです。 |
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浄法寺銭 異永 鋳放しの未仕上げ銭のため、真贋に若干の疑義が感じられます。しかし、陰起箇所や通字横の縁の凹みなどの約束事は合っており、蛍光X線回折による金属組成は下記伝世品と同等の特徴を有しています。本品もまあ、良いのではないかと思っています。 |
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浄法寺銭 異永 本品の輪側は丸みを帯びた仕上げとなっています。浄法寺寛永銭の存在比率は、異永が半分程度占めるものと思われます。 |
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浄法寺銭 異永 本品の輪側はかっちりとヤスリがけされており、安政四文銭に似た仕上げとなっています。 |
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浄法寺銭 異永 本品の輪側も安政四文銭に似た仕上げとなっています。 |
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浄法寺銭 異永 本品の輪側も安政四文銭に似た仕上げとなっています。 |