鬼怒川温泉駅
一般式多々良ゆき これより先は両毛線連絡 一般式野田線逆井ゆき
入場券 両毛線連絡券佐野ゆき
野岩線連絡券上三依塩原ゆき 野岩線連絡龍王峡往復券 会津線連絡券会津下郷ゆき
鬼怒川温泉駅には出札窓口が二箇所あり、自動券売機がその右側に2〜3台ありました。ここも東武日光駅と同様、自販機はあまり利用されておらず、窓口で乗車券を購入する人の方が多かったようです。窓口で使用されていた硬券箱は、左側窓口に大きなものがあり券種がぎっしり詰まっており、右側窓口の券箱には社線内の主要券しか入っておらず、東武日光駅の構成と似ていました。客の少ない時間は、二箇所の窓口営業はどちらか一方でしたが、営業窓口が片方だけの場合、大きい券箱を設置してある窓口の方を優先的に営業するということはなく、どちらになるかはそのとき次第でした。これは東武日光の場合にも同じ事が言えました。特急、急行券が磁気化されており、普通列車の旅客に硬券を販売するという点も、東武日光と同じでした。当駅は温泉街で夜間の乗客は極めて少ないこともあり、硬券の販売時間は夜8時頃までとされていました。夜8時を過ぎると硬券の販売は終了し、ダッチングマシーンも翌日の日付に回されてしまうのでした。
硬券の内訳ですが、社線内の普通乗車券は1030円区間まで金額式、1160円区間より一般式でした。一般式では、1160円区間が蒲生、北大宮、野田市、加須ゆき、1320円区間が業平橋、大宮、逆井、多々良ゆき、1500円区間が浅草、亀戸、船橋行きと揃えられていました。入場券はありましたが、学割、身障割引等の割引券については不明です。連絡券は、栃木連絡の両毛線、新藤原連絡の野岩線、会津線があり、すべて緑青色のA型券でした。小児券がないほかは、東武日光駅と全く同じ品揃えでした。JR連絡券は、小山、佐野、足利行きの3種類でした。私自身は、かつての国鉄線連絡券がいまだに生き残っていたことをこの駅で知り、この小山行きの券を最初に入手したときの胸が裂けるような感動は忘れることが出来ません。野岩線連絡券は全駅分用意されていましたが、やはり男鹿高原行きはほとんど売れていませんでした。かつては小児券がありましたが、この当時には姿を消していました。そして往復券として龍王峡と会津高原行きがあり、小児券もありました。社線内の往復券はありませんでした。会津線連絡券は、会津田島/田島高校前、会津下郷、湯野上温泉、西若松行きの4種類のみでした。
ダッチングマシーンは天虎製のものが二基置いてあり、片方の窓口に置いてあったものは表面板塗装が完全に剥がれた少々みすぼらしいマシーンでした。ダッチングマシーンの表面板が落ちないよう、毛ガニのように輪ゴムでぐるりと止めてしまうのも、この地区の風習に思えました。
鬼怒川温泉駅でも2000年を迎えてから、「硬券はもうすぐ無くなっちゃいますよ」という話を窓口で聞くようになりました。近くでは下今市、新鹿沼、東武日光駅にて自動改札機導入の工事が始まり、電子化の波は鬼怒川線の奥までやってきていました。鬼怒川温泉駅でも、東武日光駅にやや遅れて工事が始まりました。なお、窓口の改造は行われませんでした。
2000年2月頃には、硬券は平成12年3月31日限りで廃止という予定が立てられたようだと、駅員さんから聞いていました。しかし3月10日前後に当初の予定は切り上げられ、平成12年3月20日限りの硬券廃止が決定しました。なお、この駅は東武日光駅と異なり、末期に端末機が多用されることはなく、硬券廃止直前まで硬券が盛んに使用されました。但し鬼怒川地区の多客時は温泉客の多い12〜2月で、3月は冬場と違って温泉街自体の客数が減る時期のため、使用された硬券の総数はやや少な目でした。
この頃、硬券を購入した後に「硬券に入鋏を入れてください」と駅員さんに頼んだことがありました。東武鉄道における改札鋏は平成6年に廃止されてチケッター(スタンプ式改札鋏)に置き換えられており、この当時の駅にはもう改札鋏は無いはずでした。しかし駅員さんは「どっかにあったなあ...」などと言いながら、駅事務室のロッカーをあちこち探しまわり、購入した硬券に改鋏をパキンと入れてくれました。だいぶ前から鬼怒川温泉駅の鋏痕は、本来であれば和戸や鷲宮のような「わ行」駅が使う五角形のベースボール型で、掟破り的な使用駅でした。
最終日である3月20日は所要のため時間がなく、本当は夜の発売終了まで待ちたいところでしたが午前中の訪問となりました。ついに鬼怒川温泉の硬券も終わりという感慨のなか硬券を購入し、早々に駅を後にしました。この日をもって、東武におけるJR連絡硬券は全廃となりました。帰りの快速列車にて車掌さんにお願いし、購入した硬券の一部に横「トブ」エンボスの検札印を押してもらいました。高架化工事の進捗しつつある栃木駅で両毛線に乗り換え、115
系電車の車内で若い車掌さんにお願いし、何枚か買った小山行きの連絡券の1枚に、JRの検札印を押して頂き、記念としました。
鬼怒川温泉、東武日光駅の硬券は、パスネット導入に伴う自動改札化によって消えていった訳ですが、実際に硬券が姿を消したのは、両駅共に自動改札機が運用開始される1ヶ月以上前のことでした。 (了)
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